改善事例集~ホテル経営編
- 2018年8月23日
- webassist
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交通の利便性向上により宿泊先の選択肢が増えたため、インターネットでホテルを調べる旅行客が多くなりました。そのような時代の流れに取り残され、集客力を失って廃業する宿泊施設は少なくありません。
古い体制のまま経営が難航するホテルは、どのような改善策が効果的なのでしょうか?今回はIT導入やマニュアルの見直しによって、経営悪化を改善したホテルの事例集をご紹介致します。
目次
- 1.IT導入により周辺施設と差別化
- ①スタッフ配置と経営にITツールを導入
- ②ITサービスで顧客とのコミュニケーションを強化
- 2.非効率な長年のルーティンを刷新
- ①新ルールの徹底と意識の改善
- ②時代に応じた効率的なマニュアル作成
- 3.まとめ
1.IT導入により周辺施設と差別化
花ホテル滝のやは、福島県にある従業員6人の小規模なホテルです。周囲に14軒あったホテル・旅館は半数に減り、地域への宿泊客は最盛期から約40%減少。収益の悪化による廃業を避けるため、新規顧客の獲得に向けてIT導入のよる改善を実践しました。
① スタッフ配置と経営にITツールを導入
花ホテル滝のやでは食材の仕入れを感覚に頼っていたため、大量に仕入れた食材が腐ってしまい、損失が所持るケースが多々ありました。食材のロスが続けばサービスの原価は上がり、顧客満足度の低下につながります。
そのような問題に対処するため会計システムを導入しました。食材を消費する傾向を把握して小口仕入れに切り替えることで、食材のロスが減少し低コスト化に成功しています。
さらに時期的な来客数の増減など、状況を踏まえたスタッフ配置が行われていませんでした。そこでスタッフの勤務体制を見直し、細かいシフト管理のために表計算ソフトを導入。スタッフ過多や不足の原因となっていた、閑散期や繁忙期に合わせたシフト体制に変更しました。
② ITサービスで顧客とのコミュニケーションを強化
花ホテル滝のやは周囲の宿泊施設より早くにインターネットへ着目し、ホームページを通じた情報発信に力を入れてることにしました。空室情報の確認や宿泊予約などのシステムを構築し、ホームページでは日記を配信するようにしました。これをきっかけに新聞社やテレビに取り上げられ、新規顧客の獲得に繋がりました。
またノートパソコンやビデオカメラなどを無料レンタルし、全館に無線LAN環境を整えてインターネット環境を用意。時代に合わせたIT化によって、顧客満足度を高めています。
その結果、同業施設が廃業していく中で花ホテル滝のやは利益率を維持。ホームページからの予約客は急増し、ホテルの稼働率は20%向上しました。
2.非効率な長年のルーティンを刷新
小豆島国際ホテルは、香川県にある島内最大規模のホテルです。経営改善に取り組む前は宴会準備や清掃が非効率で、目標時間内に作業が完了しないといった問題もたびたび発生していました。
そこで体制を効率化できないかの検討を行うことにしました。時代遅れとなったマニュアルの改善を実践しました。
① 新ルールの徹底と意識の改善
小豆島国際ホテルでは食器収納のルールが守られていなかったため、雑に収納された中から食器を探していました。そのため無駄な時間が発生し、食器を探す時間は1日あたりトータル約2.5時間もの時間を費やしていました。
さらに、宴会が終わった後の食器や残飯をそのまま下膳し、洗い場で仕分けていたことも片付けの長期化を招いていました。これも1日あたり約2時間かかってしまう生む原因となっています。
これらの問題を解決するために、小豆島国際ホテルでは作業フローを見直しました。食器収納に関しては収納ルールを明確化し、ルールの確認と指導を徹底しました。下膳後の食器や残飯は、あらかじめ仕分けてから下膳することで作業工数を減らしました。
2つの取り組みによって労働時間は15%削減され、片付けが夜中にまで及んでいた問題を解決。年間で約1,200時間の余裕が生まれました。
② 時代に応じた効率的なマニュアル作成
マニュアル化された客室清掃の手法が長年変わっていなかったため、時代にそぐわない非効率な清掃内容となっていました。そのため客室清掃関連の作業により、約4.5時間もの時間がかかっていました。大幅なロスにより目標時間内に作業が終わらないため、客室清掃の担当ではないホテル管理者も応援に呼ぶ事態となっていました。
そこで客室清掃に関する作業フローを刷新し、顧客評価を保ちつつ業務の効率化を目指しました。これまで使用していた急須は、洗浄に時間がかかるためお茶パックへと変更。客室のテーブルに載せられていた案内資料の多くは、貼り紙や売店へ設置し直すことで雑多なイメージを軽減しました。
さらに客室にある窓ガラスの清掃を、掃除ロボットにより自動化。これまでの清掃レベルを維持したまま、顧客の快適性を考えて清掃内容をアップデートしました。
これらの取り組みによって労働時間は20%軽減され、ロスの減少による余剰リソースの確保を実現しています。削減できた労働時間は年間で約2,060時間となり、生産性が大幅に改善されました。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか?
2つのホテルではITツールやマニュアルの見直しにより、顧客満足度を維持しつつスタッフの効率化を実現しました。これは時代に応じて変化することが、経営改善に大きな効果をもたらすことを示しています。
そして、インターネットにより旅行客の選択肢が増えたからこそ、新規顧客の獲得チャンスも今まで以上に増えました。今後は競合のホテルよりも注目を集めるため、インターネットや発信ツールを利用した最先端のアプローチが求められることになるでしょう。
出典:経済産業省「中小企業IT経営力対象ポータル」
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/it-keiei/itjirei/case2008/case_hanahotel.html
出典:公益財団法人 日本生産性本部「宿泊業の生産性向上事例報告」
http://www5.cao.go.jp/keizai1/productivity/pdf/20170621siryo_2.pdf