改善事例集~病院編
- 2018年8月23日
- webassist
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地方から都市部への人口移動により、経営が難航する中小病院は少なくありません。時代に取り残された病院は、どのような改善策を打ち出せば良いのでしょうか?
今回は戦略的な改善策によって経営を立て直した、中小病院の事例集をご紹介致します。
目次
- 1.独自アイデアで患者を獲得した例
- ①大きな病院に挟まれる危機的状況
- ②潜在ニーズをくみ取った介護サービス
- ③経営改善策がもたらした効果
- 2.ITの導入により効率化をはかった例
- ①経営改善のきっかけ
- ②徹底した効率化とITの導入
- ③経営改善策がもたらした効果
- 3.まとめ
1.独自アイデアで患者を獲得した例
同地域で大きな病院が新設されれば、多くの患者はそちらに移動してしまいます。残された昔ながらの病院は、大きな病院より需要のあるサービスを打ち出さなければ生き残れません。
くろさわ病院は大きな病院に挟まれつつも、独自の手法で患者を獲得する病院の1つ。同院がどのように経営を立て直したのか、提供したサービスと改善策がもたらした効果をご紹介致します。
①大きな病院に挟まれる危機的状況
くろさわ病院は創設から60年以上存続している歴史ある病院です。しかし2つの大きな病院に挟まれ、地域の中核的な立ち位置を失っていまいました。
そこで同院は介護に力を入れていたことを強みに、介護分野を重視した戦略を展開。2大病院の手が届かない需要にアプローチしました。
②潜在ニーズをくみ取った介護サービス
くろさわ病院は介護に特化したサービスに注力し、高齢者へ安否確認を兼ねたモーニングコールや24時間ホームヘルプを実施。従来の特別養護老人ホームでは高齢者を閉じ込めていると考え、町内の施設を借りてデイサービスを行うなど積極的に介護環境の改善をはかっています。
特にケア付住宅というサービスでは、在宅と同じような環境の高齢者用集合住宅を用意しました。ここでは在宅での雰囲気を大切にするため、1施設には9人までしか入居できません。また介護サービスの効率化を重視して、介護度が同レベルの入居者を集めるように設定。
ケア付住宅は法律に基づく施設ではないため在宅扱いとなり、訪問介護の補助なども在宅同様に給付されています。その結果、入居率は高く空室待ちの高齢者がいるほどまで人気を集めました。
③経営改善策がもたらした効果
ケア付住宅に代表されるくろさわ病院の改善策によって、被介護者と病院側の経営両面に大きなメリットが生まれました。
まず病院としてのメリットは、病院がケア付住宅から近い場所にあることで、診察や状況把握における連携がスムーズになりました。これにより在宅医療・介護は劇的に効率化され、施術頻度や移動の観点から大きなコスト改善を実現しています。
そして被介護者が得られるメリットは、在宅に近い環境で介護を受けられる点です。介護施設では、決まった時間に他の高齢者とレクリエーションを行うことも少なくありません。自由を制限されることに苦痛に感じる被介護者にとっては、在宅と同じ感覚で過ごせることは心地よいと感じるようです。
これらのメリットが相互作用することで経営は大幅に改善。高齢者からの信頼を活かした戦略で、的確に成功をおさめた事例と言えます。
2.ITの導入により効率化をはかった例
新しい技術を取り入れず、信頼性の確かな従来の手法を大切にする病院は多くあります。反対に、最新の技術を導入することによって最善のサービスを実現している病院もあります。・
つぎに新しい技術を取り入れて、経営を劇的に改善した八女中央病院をご紹介致します。
①経営改善のきっかけ
整形外科やリハビリテーション科を有する八女中央病院は、患者数の減少やスタッフの離職率に悩まされていました。
そこで経営改善をはかるため、院長が経営者の立ち位置を2代目院長へと譲渡。2代目院長の方針に沿って、IT技術を使った大規模な経営改善が始まりました。
②徹底した効率化とITの導入
まず八女中央病院では、スタッフ1人ずつから既存の業務内容の問題点を聞き出しました。そして全スタッフの業務報告書を経営陣がチェックし、問題点の議論と改善を習慣化。スタッフの離職率が改善されるまで、このサイクルを約2年半にわたり毎日繰り返しました。
改善のためのアプローチとして、全てのスタッフが自ら行動できるように経営理念を教育しました。また多段階層であった指示系統を3段階に減らし、指示から行動までのタイムラグを減らしました。
これらの改善と並行して、従来の紙媒体でのやり取りを見直し、報告書の回覧やカルテをデジタル化しました。スタッフの指示の実行状況が可視化され、伝達ミスによる医療事故が減少しました。
③経営改善策がもたらした効果
ITツールの導入によって指示の正確性が向上し、業務におけるさまざまなプロセスの簡略化に成功しました。これによりスタッフが患者と接する時間が増え、提供するサービスのクオリティは向上。
院内のあらゆる報告がペーパーレスで行えるようになったため、改善実施前と比較してコストは半分となり大きな経営改善効果があったと言えます。
八女中央病院はこれを機に経営効率の追求を続け、院内全体のパフォーマンスを向上させる取り組みを継続。診療科の増設や医療サービスの見直しなど、積極的な姿勢で経営に臨んでいます。
3.まとめ
いかがだったでしょうか?
2つの病院は改善の手法こそ異なるものの、患者と院内スタッフを取り巻く環境を考慮。病院の強みと地域性を把握し、合理的なアプローチによって経営を立て直しました。
これから人口問題の悪化が懸念される日本では、ますます中小病院の経営が難しくなると予想されます。今後は多くの病院において、戦略的な経営が求められることになるでしょう。
出典:厚生労働省「中小病院における経営改善事例について」